今年の秋葉小夏の準備は、まだ冬の頃に始まった。
小夏というからには夏前にやる、という予定ではあったけれど、諸事情あり、今年は秋開催とした。テーマはどうするか、どのようなイメージでつくるのか。
実行委員は7人。それぞれの思いや考えをすりあわせていくことにずいぶん時間がかかったように思う。
そんな実行委員のメンバーのなかに、“原さん”という人がいる。
原さんは、フィールドスケープという造園会社の社長でもあり、アキハロハスアクションというNPOの理事長でもある。
その原さんが、会議のなかで、自然環境とともに育つこどもの教育と絡めて「幸福」ということについての話しをしてくれた。北欧やドイツの事例から学ぶべきことが多くあること、そして、いつしか話しは「秋葉区から日本の幸福度をあげる」ということになっていった。
実行委員が集まる秋葉小夏の会議は、すぐに壮大なテーマになる。
「幸福度」というのは、一概に数字で計れるものでも、地球上のすべての生き物で共有できるものでもないけれど、それぞれが思う「幸福」を創りあげる「環境」は作っていけるんじゃないかと感じている。
また、そういう、永遠にひとつの答えがでない事に対して考えや思いを巡らせていくことの面白さは、原さんの話がきっかけとなって膨らんでいく。
といいつつ、原さんの話しはとっても心に染みたのだけれど、覚えていない。
とってもよかった、ということは覚えているのだけれど、何を言っていたのか忘れてしまった。でも確かに原さんの話しはよかった。
幸せって、なんだろう。
その「幸福」というキーワードと並んで出来たのは「住む」という言葉。
昨年から様々な繋がりの中で出会った、秋葉区の区長・熊倉さんが
「秋葉区は愛着のもてる地域であって欲しい」と話してくれた。
愛着っていいなと単純に思った。
じっくりと向き合い育てていくような時間の長さを感じる。
地域を思うこと、道具を手入れしていくこと、食物を栽培すること、家を建てること、暮らすこと。
短時間では育てられないことがある。
今年、移住定住事業を始めた秋葉区は、「秋葉小夏ってすてきなイベントだよね!」といって、「何か一緒にやりたいな!」と言ってくれた。
それは助成金とかのお金でのやりとりではなくて、お互いの知恵や持ち合わせているものを出し合う、そんな関係性。
そこで勝手に名付けた「GO!BU!GO!BU!パートナーシップ」。
密かに、これも原さんの「五分五分でやりましょー」というひとこと。
ネーミング王になりつつある原さん。
関わる人々の今思うこと、から始まった今年のテーマ「幸福と住む」。
“幸福とは、自分らしく生きれること
住むとは、愛着をもてること”
ちいさな言葉の使い方、言い回し、思いのほか些細なことにこだわってできたフレーズ。このフレーズから見えるのは、個々を取り巻く環境の大切さ。
先日、原さんが、会場構成に関してこんなイメージを話してくれた。
「まず、秋葉湖の駐車場にお客様が降り立って会場へ歩いてくる。そこで最初に見えてくるのが、遊びの森のエリア。ここは力をいれてつくりたいね。だって、こどもの存在・元気・笑い声は幸福度が高いから。」
誰もが「こども」だった。
誰もが「こども」という時代を過ごして来た。
その誰もが体験してきた世界が、今年の秋葉小夏の入口。
今年の会議の始め、全体の会場構成を考えたとき、会場全体を人間の人生のように捉えていこうというアイディアがあった。
遊びがあり、学びがあり、芸術があり、仕事があり。
そう考えつつも深まらず、バタバタとしているうちにそのプランの根底は霧に隠れていった感じではあったけれど、ここにきて、その霧がはれて、今年の芯の部分がみえてきた。
造園という仕事を通して体得してきている、大きなフィールドをスートーリーを描いて掴んでいく原さんの感覚がデザインやディレクションと共鳴してくる。
それはぱっと誕生した訳ではなく、冬の間、枯れることなく地面のなかで生きることをを続けている植物のように、イベントのひとつのコンセプトが知らず知らずのうちに育っていっていた。
原さんが運営するアキハロハスアクションのホームページの冒頭にはこんなテキストがあった。
“秋葉山を舞台に自然体験・冒険活動を行っております”
秋葉小夏の会場となっているのは、新潟市秋葉区にある秋葉山のなか。
このフィールドは冒険活動を実現する環境。
冒険ってなんだろう。
便利なwikipediaで検索してみた。
“冒険とは、日常とかけ離れた状況の中で、なんらかの目的のために危険に満ちた体験の中に身を置くことである。 あるいはその体験の中で、稀有な出来事に遭遇することもいう。”
とあった。
そうか、だいたい危険なのか。
風も吹くし、雨も降る。
日差しの暑さがあって、木陰の涼しさ、木々や枝葉の存在に気づき感謝する。
秋葉小夏が単なる楽しいだけのイベントだったら場所なんてどこでもいい。
だけれど、そうではなく、秋葉山という環境でやるからには、まずは、「秋葉山にいる」ということが何よりも貴重な体験となる。
「秋葉山」というフィルターを通した秋葉小夏はどんな味がするだろうか。
3回目の今年は、どんな感触がするだろうか。
「幸福」と「住む」という交わりにくい言葉、繋げようとおもってもなかなか繋がらない言葉。けれど、今年の秋葉小夏をつくる人々の心や思いから自然に発生した、今、とっても旬なキーワードではあることは確かだから、上手にあたためて伝えたいと思う。
ふわっと湧いてきた言葉と言葉は、きっと、当日集まってくれた出店者や参加者の方々、そして、お客様とともに「あぁ、こういうことだったのねー」とつながっていく。としたい。
曖昧だけれど、よしっ。
Text: Akane Kobayashi